|
「寛仁親王牌」
連休中の渋滞を予想して早めに家を出たのはいいが、道はそれほど混んではいなくて、グリーンドーム前橋に到着したのが十二時ジャスト。おいおい、まだ5レースじゃねえか、今日は12レースまであるんだぞ、これじゃ金がいくらあっても足りねえよ、と呟いてはみたものの、見ができるのならおそらくこれほど負けが込んではいないはずで、やはり5レースから車券を買ってしまうのだ。
そうやって買った車券は案の定、かすりもせず。財布の中身が無為に減っていくだけだ。
福島の金古将人が大会前に重い風邪を引いて体重が6キロも落ちたそうだという情報を手に入れて挑んだレースも、佐藤慎太郎から買っていたにもかかわらず、結果は抜け目でどうにもならない。
顔見知りの選手ふたりが同乗する準決勝。富永益男の三着づけ、児玉広志の二着づけの3連単車券をそれぞれ別に買ってはみたものの、児玉の落車に富永が巻き込まれてジ・エンド。
しかし児玉もそろそろ考えてほしいなあ。あんな状況で落車されるんじゃ、いくら顔見知りで個人的には好きな男でも、車券は買えない。小柄な身体でも勝つためにと、いろいろ工夫しているのはわかっているのだが。
準決勝の勝負レースは第10レース。絶好調の岡部が高谷を連れてひと捲り。村上が前で粘って、岡部−村上の裏表、まさかの高谷も買い足しておけばなんの問題はないと自信満々で挑んだものの、村上の内を突いて岡部が逃げるそれこそまさかの展開。あれじゃ高谷も差すよなあ。でも、高谷−岡部は少ししか買っていないのよ。取りガミ。
12レースは小林大介がらみの車券なんぞ一銭も買っているはずもなく(だいたい、神山の番手捲りだろう、普通。なんで佐々木のケツに小林がはまるんだよ。どうしてああいう展開になってるのに佐々木が馬鹿逃げするんだよ。競輪選手ってどうしてこうも頭が悪いんだよ……以下、愚痴略)、天を仰いで帰途に着いた。前橋日帰り。宿泊するのも馬鹿らしい。
翌日は、前日を反省して午前十一時に出発。道路は昨日以上に空いていて、グリーンドーム到着は十三時ちょっと過ぎ。負け戦をちょぼちょぼ買って、負けたり勝ったりを繰り返す。しかし、松本と手島が競って落車して、村上−新田で決まったあのレース、あれが勝負レースだったよなぁ。五千円しか持ってないんじゃ話にならないよなあ。負けが立てこんでると、思い切った勝負ができない。わかっちゃいるのに気持ちが引いている。
決勝戦。逃げたら岡部に差される伏見と余裕の小嶋は捲り狙い。となれば、二段駆けの関東勢しかあるまいと、太田−小橋裏表の3着に数点流す3連単買い。軍資金に余裕があれば2車単で勝負するのだが、金がないとオッズになびく。最終4コーナーを選手が一団になって回ってきたときは、よっしゃ、これで前橋はおれのもの−−とわけのわからぬ叫びを上げていたのだが、岡部が内を突いてするすると伸びてくる。
「やめてくれ、岡部。おまえは3着でいいんだ!!」
という絶叫も空しく、太田−岡部−小橋で入線。岡部のあれ、内を突きすぎだろう、失格だろうと悪あがきの言葉を吐いてみたが、審判員は白旗を振っていた。
一緒にいた競輪友達が目を丸くしてた。
「なに、馳、太田−岡部持ってないの? 五千円もついてるのに」
だから、3連単で勝負しちゃったのよ。2車単勝負なら持ってる車券なんだけどね、普段ならね。でも、関東勢の二段駆け決まる展開なら、普通、他のラインいらないでしょう。33バンクなんだし。
要は、岡部の好調さを甘く見たおれが悪かったということだなあ。小嶋を張るんで小橋もいっぱいいっぱいだったしねえ。
「だからさあ、おまえはん百万単位で勝とうとしすぎなんだよ。五万でも十万でも勝ちは勝ちだろう」
3連単で勝負したことを友人に詰られながら、橋をとぼとぼ渡って駐車場へ。わかってるんだけどね。わかっちゃいるんだけどね。
連休の最終日ということもあって、関越道は渋滞。負けていることもあって、いらつく。昔は良かった。特別競輪の決勝は火曜日と相場が決まっていて、準決勝から泊まり込みで戦いに行って、競輪が終わった後は温泉だの、地元の名産を食べるだの、楽しみがあった。土日、もしくは連休の最中にお出かけじゃ、どこもかしこも混んでいて遊ぼうにも遊べない。まあ、おれたちは堅気ではないから昔が懐かしい。まっとうな勤め人には、日曜決勝の方が都合がいいのかもしれないが。
ラジオをつけながらだらだら走っていると、「交際相手の子供を虐待したとして逮捕された『こだまひろし』容疑者は−−」というニュースが飛び込んできて、おれと友人は大笑いしてしまったのだった。もちろん、競輪選手の児玉広志とは同姓同名の別人なのだが、おかげで憂鬱が少しは晴れた。
それにしても……「岡部ぇぇぇぇ」。ハンドルを握りながら何度そう呟いたことだろう。
ふるさとダービー四日市は面子が酷いのでパス。ということは、次は一宮のオールスターか。中部地区で特別競輪やるの、やめてくれないかなあ。と憎まれ口を叩きつつ、やっぱ行くよな、行かないわけにはいかないよな。愚かな男だ。
(2003年7月26日掲載)
|