Hase's Note...


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「WWF」

 日本のプロレスを見なくなってもう随分になる。直接のきっかけはジャイアント馬場さんが亡くなったせいなのだが、まあ、それ以前からプロレスに飽きていたのも事実だ。
 十代になるかならないかの頃から、わたしはどっぷりプロレスに漬かっていた。わたしをプロレスの虜にしたのはアントニオ猪木であり、新日本プロレスだった。その猪木に倦んで旧UWFに走り、新生UWFの嘘臭さに絶望して全日本プロレスに腰を落ち着けた。全日本のプロレスは確かに面白かったが、いつも同じ面子では飽きがくる。やがては、プロレス会場から足が遠ざかる。
 プロレスを心底楽しんで見ることはもうあるまい、とほとんど信じ込んでいた。それが間違いだと悟ったのは、CS放送を導入してからだ。
 なんの気になしにつけたチャンネルでやっていたのが、WWF(ワールド・レスリング・フェデレーション)の「ROW IS WAR」だったのだ。
 わたしは新日本プロレスでプロレスを知った。猪木が衰えて老醜を晒すようになるまではがちがちのストロングスタイル信奉者だった。つまり、アメリカン・プロレスはフェイクだ、くそだと信じて思春期を過ごしてきた。
 たとえば、かのカール・ゴッチの「アメリカのプロレス・ファンの精神年齢は七歳以下だ」という言葉をかたくなに信じていた。
 ために、画面の中で、馬鹿でかいアリーナが超満員に膨れあがり、異様なテンションの高さを示していても、「たかがアメプロですごい盛り上がりようだな」ぐらいにしか思っていなかったのだ。
 わたしは間違っていた。わたしは馬鹿者だった。
 WWFはとてつもなく面白いのだった。あざといながらも人の下司な心をくすぐってやまない大がかりなストーリー展開(そう、プロレスにストーリーは欠かせない)。普段はショボいプロレスしか見せないくせに、ここ大一番となるとそれなりのことをやってかますスーパースターたち(彼らは単なるプロレスラーではない)。
 リングの中だけで繰り広げられる「プロレス」だけならば、新日本や全日本、あるいはノアのレスラーたちの方が遥かに凄いことをやっている。だが、だ。所詮はプロレスじゃないか。だれが強いの弱いのより、客を盛り上げたなんぼの世界がプロレスじゃないか−−日本のプロレスの世界に飽いてしまった人間には、WWFの潔さはなんとも心地がいいのだ。
 なにしろ、団体のオーナーであり、団体のレスラーであり、団体のコミッショナーでもある(!!)ヴィンス・マクマホンが「プロレスとはショーとスポーツの間に位置するものだ。プロレスとはスポーツ・エンタテインメントだ」と宣言しているのだ。これをいってしまえば、「プロレスなんて八百長じゃないか」などという馬鹿げた批判など気にしなくてもすむ。客をエンタテインすることだけを心がければいい。そして、客は必ずWWFのプロレスを楽しむのだ。
 そこには日本のプロレスが抱える重苦しさは微塵もない。トップに立つレスラーは、レスラーとしての力量以上に、俳優としての才能が求められる。それでいい。プロレスは真剣勝負ではないのだ。八百長ではないが、フェイクではないともいいきれない−−それがプロレスだ。ならば、見栄えのいい肉体に、よくまわる口、豊かな表情を持ったレスラーが、技量とは関係なしに観客の支持を得てもかまいはしない。
 同じアメリカのプロレス団体にWCWというのがあるが、こちらはつまらない。たぶん、団体を仕切る人間の脳味噌の問題なのだろう。ふたつのプロレス団体を見比べれば、ヴィンス・マクマホンという人間の凄さがわかる。
 ともあれ、わたしはWWFにどっぷりはまっている。WWFの放映がある月曜と火曜(時に水曜)は外出を控える。テレビの前に噛りつき、WWFきってのスーパースター、ザ・ロックの登場を心待ちにする。ロック様と一緒に叫ぶ。
IF YOU SMELLLLL!!!! WHAT THE ROCK IS COCKING!!
「馬鹿じゃないの」と連れあいがいう。だが、いまでは連れあいもWWFにはまっている。ロック様のライバルであるトリプルHの登場シーンになると、連れあいもテレビの前に飛んできて歓声をあげている。
 WWFは素晴らしい。いつか、現地で見てみたいものだ。
 そして、もう一方の雄、ストーンコールド・スティーヴ・オウスティンと共に叫ぶのだ。
THAT'S THE BOTTOM LINE! COS STONE COLD SAID SO!!!!!
 やめられません。

(2001年03月28日掲載)

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