Hase's Note...


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「クイズの答え」

 早速、正解から。わたしが買った車はBMWの330クーペ。
 なぁんだ、という答えが聞こえてきそうだが、何百万もする買い物である。わたしも真剣に考えた。
 このサイトに寄せられた解答には、圧倒的にイタ車が多かった。いわく、わたしに似合うとか、それっぽいとか。
 わたしも、はじめはイタ車が欲しいとは思っていた。車の素人でも、イタリア人が造る車が官能的なのはよくわかる。しかし、だからといっていきなりフェラーリやランボルギーニを買おうとは思わんだろう。
 マセラッティについては、北○謙○さんが三十すぎて免許を取って初めて買った車として、文壇内ではすでに有名であり、酒の席で「あのオヤジもよ、いきなりマセラッティ買うか、普通」という声をよく耳にしていた(わたしが口にしていた、という説もある)こともあって、どんなことがあっても最初の車をマセラッティにするわけにはいかないのだった。でも、3200GTは恰好いい。いつか、買いたい。
 フィアットには欲しいと思える車がなく、残すはアルファロメオだったのだが、それとなくネットを散歩してみると、「壊れた」という記述がやたらに目に入ってくる。まあ、「おれの車は調子がいい」というより「壊れた」という方がインパクトがあるのでどうしても目につくのだろうが、生まれて初めて買った車がすぐ壊れたのではやるせない。
 それで、イタ車は断念。
 イタ車以外では、ジャガーをわたしに奨める人も多かったのだが、これもマセラッティに似た理由ではなから考慮の外。というのも、あの金子達仁が1300万円もするジャガーにのっていやがるのだ。わたしとしては、断固として同じ車種で金子より安い車に乗るわけにはいかない。かといって、生まれて初めて買う車に1500万もの金を使えるか、というわけだ。今年はまだ新刊を出していないので、わたしの懐具合は極めて寂しい。ジャガーに落ち度はない。すべて、金子が悪い。
 フランス車や北欧車はどうもぴんと来ないし、アメ車はかなり真剣に検討したのだが、でかい、大食いというイメージを拭い去ることができなかった。今のアメリカ車はそうではないのだろうけれど。
 で、やっぱりドイツ車かという結論にいたるわけだ。しかしながら、ベンツだけは死んでも買いたくない。路上教習中、一番頭に来たのだがベンツだからだ。平気で割り込みしてくるし、左折のときに被せてくるのも決まってベンツだった。てめえら、何様だ!? ベンツに乗ってりゃ偉いのか、おう!? くそ共めらが。これまた、ベンツが悪いわけではないのだが。それに乗る人間の質の問題なのだが。
 ポルシェを買うのはなんとなくおそれおおく、フォルクス・ワーゲンは甲虫のイメージが強すぎ、アウディはなんかおっさんくさい、オペルはちょっと……ならばBMWかということで周囲の人間に聞くと、BMWはそこそこに評判がよろしい。ベンツのCクラスを買うぐらいなら、絶対にBMWの3シリーズがよい、とだれもがいう。そこで、BMWのサイトでカタログ請求をばしたところ、西新宿のBMWのディーラーがわざわざカタログを持参してくれた。
 このディーラーの応対で、わたしの心は八割がた、BMWに傾いたといっていいだろう。商売上手な人の仕事の進めぶりというのは、見ていて気持ちがいい。本当はZ3という2シーターのオープンカーが欲しかったのだが、連れあいと犬を同時に乗せることができないので、断念。代わりに3シリーズで一番排気量の多い330のクーペを注文した。
 セダンじゃないのは、クーペの方が断然クールだし、犬を後部座席に乗せるのであれば、後ろにドアがない方が安心、という観点からでもある。
 色は黒。埃や傷が目立ってメンテナンスが大変だといわれたのだが、黒いBMWは、わたしの目にはめちゃ、恰好いい。他に気になる色の車は納車までに数ヶ月かかるということもあった。教習所での感触を覚えているうちに、自分の車で路上に出たいでしょう、普通。
 即日、ローンを組み、家の近所の駐車場を確保して書類を用意、あとは納車を待つのみ、ということになってしまったのだった。
 あんなにわくわくして日を過ごしたのはいつ以来だろう。本当に待ち遠しかったな、納車。
 で、先週、黒いBMWが納車された。他の車とは比較できないのだが、少なくとも教習所で使っていたホンダのシビック・フェリオとは段違い。同じ車とは思えないほどの馬力、加速のスムーズさ、ハンドリングのよさ。駐車場でボンネットを開けて、さらに溜め息。
 エンジンルームの美しいこと。頬ずりしそうになったが、エンジンがまだ熱かったのでやめた。
 今では夜な夜なドライヴに出かけている。都内の道路を、恐怖と闘いながら走っている。もっとスピードを出してみたいという欲望と闘いながら走っている。車庫入れに苦労しながら、もっともっとうまくなってやると思っている。こんなに楽しいものなら、もっと若い時に免許を取っておくべきだったと思っている。
 こんな気持ちがいつまで続くのかはわからないが、しかし、わたしは生まれて初めて買った車に、もう、メロメロなのだった。おそらく、一、二年後には2シーターのオープンカーも買っているに違いない。
 そういえば、どう見ても新車の漆黒のBMWに若葉マークを貼りつけて、車から降りてきた金髪の中年男を見て、ガソリンスタンドのお兄ちゃんは明らかにびびっていた。
 悪いことしたな。
 というわけで、クイズの当選者発表。応募総数は126。うち、メーカー名にBMWと書いてきた人は、11名。うーん、よっぽどおれにはBMW似合わんと思ったか。まあ、半数以上の人はアルファロメオかマセラッティと書いてきたからなぁ。どうも、あまりにも難しすぎたようで……。それと、このウェブで何度も何度も、作家はみんなが思ってるほど金を持っているわけではない、と書いてるのに、みんな、馬鹿高い車を答えてくる。そんなには銭ないんだってば、本当に。宮部みゆきさんと偽装結婚したいぐらいなんだって、本当に。税金さえなけりゃ、フェラーリでもロールスでも買ってやるんだって、本当に。
 で、当選者はこの11名からランダムに選ぼうかと思ったのだが、唯一、BMWの3シリーズと書いてきた、東京都の千野邦彦さんにサングラスをプレゼントします。
 また、なにか思いついたら、ちょくちょくこういう企画立ち上げるので、落選した人も怒らないように。
 岐阜のオールスター競輪、久々の大勝。伏見、よかったな。おれもよかった。
 

(2001年09月26日掲載)

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