Hase's Note...


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「健康診断の結果」

 先週の金曜は日本推理作家協会の長編賞、短編賞、評論賞の選考会だった。わたしは長編賞の司会をすることになっていたので、選考会場へ向かった。そこで聞いた話。
 五月頭に協会理事の改選選挙があったのだが、わたしは見事理事落選。現役理事が選挙で落選するなど前代未聞のことらしい。わはははは。これでわたしを永久奴隷にしようとしていた○方○三と大○在○の目論見ははかなくも潰えたことになる。嬉しいなあ。
 長編賞は浅暮文三さんの『石の中の蜘蛛』と有栖川有栖さんの『マレー鉄道の謎』のダブル受賞。短編賞は受賞作なし。評論部門は山前譲+新保博久さんの『幻影の蔵』。
 受賞者の浅暮さんと新保教授を囲んで銀座の文壇バーで宴会。久しぶりの外での酒だったので調子にのって飲みまくり。気がつけば東野圭吾とふたりで銀座の某クラブ。三時半になってさすがにこれではまずいと重い腰をあげた。支払いは作家長者番付九位の東野圭吾持ち。経費使わせてやらんと。
 翌土曜は知り合いの夫婦が晩飯を食いにやってくることになっていて、二日酔いの頭を抱えながら新宿のデパートに買い出しに出かけた。ここでトラブル発生。最初から足が重く、膝の関節がだるいとは感じていたのだが、急に悪寒が襲いかかってきたのだ。風邪の前兆だ。帰宅しても悪寒は収まらず、来てもかまわんといってしまった手前、やってくる若夫婦に外食させるわけにもいかず、ふらふらしながらディナーをこしらえる。
 具合が悪いので前菜にサラダ。出来合いのラム肉ロースト。それにわたし自慢のイタリアンミートボール。ミートボールは最高に美味しくできたのだが、作り終えたところでダウン。熱をはかると、なんと39度5分。もともと風邪を引きやすい体質で、熱もすぐ38度を超えるのだが、39度5分は久しぶり。くらくらしつつ、これがSARSだったらすげえな、おれ日本人第一号じゃんなどとくだらない考えが頭をよぎった。阿呆だのう。
 わたしが作った超美味なミートボールをうまいうまいといってはワインと一緒に流し込む若夫婦と連れあいにおやすみをいって、ベッドルームへ直行。三人は病人におかまいなく騒いでいる。わたしの様子を気遣ってくれるのは犬のマージだけだ。わたしはマージの頭を撫でながらちょっとだけ泣いた(嘘)。そのまま月曜まで寝込んだ。
 ちょうど月曜は、四月の終わりに受けていた健康診断の結果を聞きに行くことになっていたので、ついでに風邪の診察もしてもらうことに。風邪は最悪の状態を通り越していたので、薬をもらってあとはちょんちょんという感じで済むのだが、問題は健康診断の結果。
 γ−GTPなどなど、肝臓にまつわる数値が高いのは覚悟していたのだが、それ以外にも血中の中性脂肪値が目眩を覚えるぐらい高く、尿酸値も基準値を超えていた。このまま行くと糖尿病、あるいは痛風一直線だ。わたしの親父も糖尿病だったのだから遺伝的に注意する必要がある。
 といってもうちの親父は極端な偏食で、晩食は刺身と日本酒オンリー。野菜どころか米粒すら口にしなかった。わたしが中学のころに糖尿病になって二年ほど断酒しつつ食餌療法を受けていたのだった。治療のおかげで血糖値が下がり、医者から「よく頑張ったね。これなら焼酎一杯ぐらいなら飲んでもいいよ」といわれた親父は舞い上がり、どこで見つけてきたのかスヌーピーのイラストが入った馬鹿でかいグラスを買ってきて、安物の焼酎を表面張力で盛り上がるまで注いで「一杯は一杯だからな」とだれにともなく言い訳しながら焼酎をうまそうに飲んでいた。そんな親父を見て、クソガキのわたしは酒なんか死んでも飲んじゃいかんななどと思っていたのだが、気がつけば親父以上の飲んべえである。ちなみに親父と兄のわたしを見てきた弟はあまり酒を飲まない。もうひとつちなみに親父は交通事故で死んだ。自分で車を運転しつつ、対向車線を走っていたタンクローリーに正面衝突したのだ。後部座席に載っていた大叔父夫婦は即死、助手席に乗っていた妹は奇跡的に軽傷で済んだ。事故の原因はわかっていないのだが(事故が起こった瞬間まで妹は寝ていたのだそうだ)、状況から見て、運転中に急に血糖値が上がるんだが下がるんだがして意識を失ったのではないかと思われている。
 話が外れた。健康診断の結果だ。スペインから帰ってきた直後に診断受けたからなぁ、エビやカニ死ぬほど食いまくった後だもんなぁ、そら尿酸値高いわなあ、などと自分を慰めてみたが、気分は悪くなるばかり。わはははは。自業自得なんだけど。
 四〇にそろそろ手が届くという年頃になって、身体中のあちこちにがたが来ている。自堕落な生活を送っていたのだから当然だが、まだまだうまい物食いたいし、酒は死んでもやめられない。しょうがないのでこれから自宅で作る飯は和食を基本にしようと決めたのだが、いつまで保つことやら。今では中性脂肪の低下に役立つとかいう特殊なお茶を毎日がぶ飲みしている。

(2003年5月31日掲載)

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