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9月11日 軽井沢 59日目
7時に目覚ましが鳴ったが、起きあがることができずに何度も寝返りを打った。そのうち、マージがひんひん泣きはじめて、わたしをベッドから引きずり出す。
曇り。気温は高くはないが、蒸している。寝ている3人を起こさないように気を使いながら犬たちを外に出す。
スポーツパークのグラウンドには珍しく先客がいた。茶色のラブラドール。馬が合うならワルテルと遊んでもらおうと思ったのだが、なぜか、マージがいきなりラブラドールに吠えかかった。気に入らないらしい。一応挨拶は交わしたが、その後もマージは吠えつづける。
飼い主が苦笑いを浮かべながら、ラブをドッグランの中に連れていく。
「すみません」
わたしは恐縮しながら頭を下げ、ラブと入れ違うようにマージたちをグラウンドに誘導した。ワルテルはラブが気になるようだったが、わたしがぶんぶんボールを投げると、すぐにそれを追って走りだした。もちろん、ワルテルがぶんぶんボールにすぐに飽きることはわかっている。今日は、訓練のためにジャーキーを持参していた。ステイとカムの練習をするのだ。
ぶんぶんボールに飽きたワルテルを呼び、マージと一緒に千切ったジャーキーを食べさせる。これで、ワルテルは(マージも)わたしがおやつを持っていることを認識する。
ワルテルを座らせ、ステイをかけ、遠ざかる。マージがついてくる。おやつを寄こせと懸命に歩いてくる。20メートルほど離れたところでワルテルに声をかけた。
「カム!」
ワルテルがすっ飛んでくる。マージは頑張って歩いたことを、ワルテルにはステイとカムを実行したことを褒め、ジャーキーを与える。マージもワルテルも真剣だ。マージなどは、こっちが心配になるほど歩き続けている。食い物に対する執着は呆れるほどだ。
10分ほどつづけたところで、これ以上はマージの体調に支障を来すと判断して訓練を中止した。おやつがあると、ワルテルのステイとカムは完璧だ。後は、徐々におやつなしでも完全に命令に従うようにさせなければならない。わたしはどうしてもマージに気を取られてしまうので、マンツーマンの訓練ができないのがちょっとした頭痛の種だ。だが、地道にやっていくしかない。
別荘に戻ると、Kさんが外にいて、カメラを構えていた。マージとワルテルの写真をまた、たくさん撮ってもらう。
「早起きですね、Kさん」
「Fちゃんの鼾が酷くて眠れなかったよぉ」
Kさんは苦笑いを浮かべながらいった。そう、Fさんの鼾の凄まじさは伝説的なのだ。ヨーロッパで電車に乗り、眠っていたところ、3列前の外人が怒気を露わにしてやって来て「ジーザス・クライスト!」と叫びながら、鼾をかいているFさんを叩き起こしたという有名な実話もある。
「そりゃ大変だ。災難だったですね。耳栓持って来ればいいのに」
連れあいもFさんもまだ眠っていた。
マージの朝ご飯は作り置きのスープ(下痢があるので、豚肉は除いた)に二〇穀米入りご飯、焼き鯖、ハーブミックス、大葉、すりゴマ、各種サプリに下痢止めの薬。ワルテルにはご飯の代わりにドッグフード。
マージは少しだけ残したが、問題視するような量ではなかった。
連れあいたちは目覚める気配がなかったが、わたしは空腹だった。そうめんを茹でるつもりでいたのだが、いつ起きてくるのか判断がつかない。しょうがないので自転車で旧軽に行き、フランスベーカリーでパンを買った。ピロシキ、チーズとベーコンのバゲット、それに普通のバゲット一本。
別荘に戻り、Kさんとパンを食べていると連れあいとFさんが起きてきた。タイミングが悪いことこのうえない。
とりあえずふたりには果物で我慢してもらう。
代わりにといってはなんだが、昼は頑張る。「藤村」でお土産にもらった「りこぼう(地元の人はそう呼んでいる)」という大きなナメコのようなキノコを使って、にゅうめんを作る。じつは陰で手抜きをしたのだが、好評を博す。いや、自分で言うのもなんだが、旨かった。
ゴルフの打ちっ放しに行くという3人を見送って、仕事に立ち向かう。
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| へっへっへ、完全復活よ! |
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| マージが具合悪くなると、みんなぼくのこと無視するようになるから、やめてよね。
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| おやつ欲しさに無理矢理訓練に参加するマージ。
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2時前後から雨が降り始め、気温が急激に降下した。半袖一枚では肌寒く、上着を羽織って仕事に勤しむ。
いつものように4時で仕事を切り上げると、見計らっていたように3人が打ちっ放しから帰ってきた。そのまま帰京するというFさん、Kさんに別れを告げ、わたしと犬たちは散歩に出かける。雨はあがっていたが、地面は濡れそぼっている。スポーツパークは諦め、近所をてくてく歩いた。マージの歩く速度に合わせると、ワルテルが必ずリードを引っ張ってしまう。可哀想だが、ヒールの命令は絶対だ。いい機会だと思い、訓練を施しながら歩く。ただ歩いているよりワルテルも気晴らしになるだろう。
問題はただひとつ。わたしがワルテルばかりを褒めるのでマージが臍を曲げることだ。ゆるしてくれよ、マージ。おまえのことを一番大切にしてるのはわかってるだろう。
15分ほどで散歩を切り上げ、マージだけを別荘に戻す。わたしとワルテルは敷地内で訓練の続きだ。ステイとカム。軽井沢にいる間に、もっと充実させておきたい。ワルテルはおやつ欲しさに、動きたいのをこらえてステイを続け、カムの声がかかると一目散に駆けつけてくる。走りに走らせ、ワルテルの体力を奪ってから訓練を切り上げた。
マージのご飯はケーナインヘルスに鶏レバー、鶏ササミを半分ずつ。ワルテルにはドッグフードと鶏レバー少々。
6時半に家を出て「藤村」に向かう。今日はキノコ鍋&手打ちうどんを師匠にゴチになるのだ。もちろん、唯川夫妻も一緒。
席につくと、唯川大姐と「たかくら」のママがうどんを捏ねていた。そして、「マジかよ」と呟きたくなるぐらいに大量のキノコの山。
松茸、ウラベニテングシメジ、ヒラタケ、タマゴ茸、舞茸、その他諸々の名前も覚えられないキノコたち。野菜に豆腐、比内鶏。最後には大振りのタラバガニの足丸ごと一本まで出てきて、もう食えず、動けず。うどんはうどんとして旨く、すいとんにして旨く、パスタ風にして旨い。
食いすぎてどうにも動けず、座敷で横になっていたら、唯川大姐が会計を済ませてしまった。いつもご馳走様です。わたしより稼いでいるのだから遠慮なくゴチになります。嘘です、今度はわたしが奢ります。
9時に別荘に戻り、しばしまったりしてから、胃の消化を促すべく、犬たちと外に出る。マージは暗闇を怖がる犬に戻っていた。オシッコを済ませると、すぐに別荘に戻りたがる素振りを見せる。無理矢理引き回してもストレスになるだろうから、別荘に戻してやる。
わたしはワルテルと自転車。いつもより長く走る。すまんな、ワルテル。わたしのダイエットに付き合わせて。
ゲラを読まなければならないのだが、腹が膨れたままでその気にもなれず、レンタルビデオ屋で借りてきたDVDを見ることに。「ターミナル」。ところが、映画がはじまって10分ほどしたところで映像がとまり、やがて画面がブラックアウトした。次の瞬間「データが読みとれません」の文字。
ちきしょう、てやんでい。ディスクを拭き、データ読みとり部分のレンズを点検する。もう一度再生。またフリーズ。何度繰り返しても同じことで、結局、「ターミナル」は諦めて「オールド・ボーイ」を見ることに。こちらも、途中で映像が乱れる。うちのプレステ2がおかしいのだろうか? だが、他のソフトは問題なく動くのだ。
いろいろ格闘したおかげで無駄に時間が過ぎ、映画を見終わったのは午前1時半。参った。
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| こちらは夕方、ワルテルだけの単独訓練。 |
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| 顔を輝かせてすっ飛んでくる。
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