Hase's Note...


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「うっちん茶」

 5泊6日の日程で沖縄に行き、正味5日間でレンタカーを800キロばかり走らせてきた。久々に車漬けの毎日だったのだが、最終日、沖縄本島南東部から今帰仁方面に向かおうと、南風原北インターから高速に乗り、アクセルをぐわっと踏み込んだ瞬間、バックミラーになにやら赤い回転灯が(涙)。
 33キロオーバー、罰金2万5千円なり。
 くそ沖縄県警、高速の入口で待ちかまえているとは卑怯千万なり。何度も高速に乗っていたから、オービスの位置は完璧に把握していたというのに。
 まあしかし、沖縄の人に聞くと、観光客が乗るレンタカーは滅多なことじゃ捕まらないという。問題はわたしのレンタカーだ。編集者が気を利かしたのか、それとも自分で乗りたかったのか、先代ベンツのCクラスだ。こんなもんが沖縄のレンタカー屋にあるのかとわたしも驚いたが、そういえば、わたしを追いかけてきたおまわりも、「あれ、これレンタカーなの?」と驚いていたっけ。マーチとかフィットとかヴィッツに乗ってれば、こんなことにはならんかったわけだな。畜生。車が流れてるところじゃ、みんな平気で120キロぐらい出してるもんな。113キロで捕まってちゃ、泣くに泣けんわな。
 わたしに説教を垂れたおまわりの言葉。
「110キロもスピード出してハンドル切り損ねたら大事故になるからね」
 だったらベンツやBMやポルシェやフェラーリを日本で売るんじゃねえ。ぼけ。
 ということで、反則切符切られた後は、悔しいから130キロ平均で高速を吹っ飛ばしてきたのだが、その前日は宮古島に行っていた。さすがに宮古にベンツはなく(当たり前だ)、おんぼろのカローラを借りて島内をぐるぐる走ったのだが、アクセル踏んでも加速しねえ、走らねえ、ブレーキゆるゆる、ああ、恐ろしい。それで思い出したのだが、一昨年、教習所に通っていたとき、教習所の車で第3京浜で90キロ出したらハンドルぶるぶる震えるわ、ボディががたぴしいうわ、まっすぐ走らないわで、これは恐ろしくて国産車になんか乗れたもんじゃないと思ったのだった。日本のメーカーも考えないと、教習所に売る車、安いからって手を抜いてたら、わたしのような中年は絶対に国産車買わなくなるぞ。教習所の車はホンダ車で、わたしはホンダの車にだけは死んでも乗るまいと思ったものだ。
 それはそれとして、毎日車を乗り回し、夜は夜で人と会ったりなにしたりで食いまくり、飲みまくり、わたしは確実に太り、わたしの肝臓は確実にダメージを受けていた。それでも連日連夜泡盛を浴びるように飲み続けることができたのは、うっちん茶のおかげだろうと思っている。
 うっちん茶とは要するにうこん茶のことだ。飲み屋に行って、酒と一緒にこのうっちん茶を頼んで交互に飲んでいると、消費したアルコール量ほどには肝臓に与えられたダメージを感じずに済む。まあ、調子がいいからといって飲み過ぎるというデメリットもあるのだが、とにかく、飲んでいる間はこのうっちん茶を手元からはなすことができないのだった。
 コンビニに行っても、ペットボトル入りのうっちん茶が売られているので、ホテルの冷蔵庫に大量に放り込んでおけば、飲み過ぎなんてへっちゃらだもんね、と馬鹿丸出しのアホ酒飲みに変身してしまう。
 コンビニで売っているうっちん茶はポッカが作っているのだが、どうして東京で売らないのだろう。ある人によると昔は売っていたらしいのだが。今、このうっちん茶を大々的に売り出せば、世の酒飲み父さんたちは飛びつくと思うのだがなあ。少なくともわたしと、わたしと一緒に沖縄に行っていた中年編集者は、東京の飲み屋にもうっちん茶を置くべきだと叫んでいた。売らないかなあ。わたしは今現在、ティーバッグ入りのうっちん茶を家で飲んでいるのだが。
 沖縄は相変わらず気持ちがよくて、松山で食った牛のテールスープは死ぬほどに美味だったのだが、それにしても2万5千円、痛いなあ、むかつくなあ。



 沖縄から帰京したら、生島治郎さんの訃報が待っていた。人は死ぬ。生島さんが数年前から体調を崩していたことは知っていた。いつかは死ぬのだろうと思っていた。それでも、遺影を前にすると胸が詰まる。通夜の夜は、北方謙三、大沢在昌、船戸与一、西木正明、藤田宜永氏らと痛飲した。若い読者は知らないだろうが、みんな、生島さんの小説を貪るように読み、憧れていたのだ。ダンディで優しくて、怒るととても怖い人だったが、書く気力、生きる気力をなくしてからはめっきり衰えていった。そういう生島さんを見ているのはとても辛かった。葬儀委員長は大沢さんがつとめたのだが、一緒に飲んだ先輩作家たちが死んだら、おれが葬儀委員長をやらされるのだろうか。いやだなあ。香典もいっぱい持ってかれるしなあ。

(2003年3月7日掲載)

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